大田区大森・山王の鍼灸院、りゅうしん堂では
疲労(疲れ・倦怠感)をどうみるのか
東洋医学と西洋医学の視点を織り交ぜながら
ご紹介します。
疲労とは休息の必要性を知らし、過剰活動により疲弊してしまうのを防御するための重要な生体アラームの一つです。
日本疲労学会では、過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態と言われています。
疲労は疲労と疲労感とに区別されます。
・疲労:心身への過負荷により生じた活動能力の低下
・疲労感:疲労が存在することを自覚する感覚で、多くの場合、不快感と活動意欲の低下がみられる
※栄養ドリンクなどで回復するのは疲労感の方で、疲労は取れていないことが多く気をつけましょう。
また疲労は継続する長さによって3つに分けられます。
・急性疲労:1日眠ることで改善する疲労
・亜急性疲労:1週間程度続く疲労
・慢性疲労:6ヶ月以上続く疲労
この中で治療の対象になるのは慢性疲労になります。
日本では約60%の人が疲労を自覚し、全体の37%の人が6ヶ月以上持続する慢性疲労を感じています。
疲労に対してなぜ鍼灸施術が有効なのか、現在のところそのメカニズムは明らかになっていないことが多くあります。
しかし、近年いくつかの重要な知見が報告されています。
慢性疲労を自覚する被験者に対して灸施術を行った結果、主観的な疲労状態を改善させるとともに脂質酸化損傷マーカーであるMDA(酸化ストレスの指標)の有意な減少、抗酸化作用を持つグルタチオン還元酵素、およびグルタチオン量の有意な増加が認められたとの報告があります。
また、動物実験ですが鍼施術でも同様の傾向が示されており、MDAの発現量が減少し抗酸化作用を持つ血清SOD活性とグルタチオンペルオキシターゼ活性が上昇したと報告されています。
さらに鍼施術は脳血流やセロトニン代謝、自律神経に影響を与えることがわかっています。
6ヶ月以上持続する全身性の激しい疲労感が主訴である慢性疲労症候群では、酸化ストレスの増加や脳局所の血流、アセチルカルニチン、セロトニンの低下があり疲労感に伴い自律神経系に変調をきたすと言われています。
鍼灸施術の作用はこれらの疲労の現象を取り除く方向に作用するものであり、疲労軽減メカニズムの一端であると考えられています。
東洋医学では次の3つの要素で身体のバランスを保っていると言われています。
・気(き):身体を動かすエネルギー、元気のもと
・血(けつ):身体と心を養う栄養
・津液(しんえき):身体を潤し、クールダウンさせる
疲労とは
✔️身体を動かす元気(エネルギー)がない
✔️回復に必要な栄養が不足している
✔️エネルギーや栄養はあるのにうまくめぐっていない
といった不調が身体のどこかで起きていると考えられます。
疲労では次の5タイプがよくみられます。
頑張りすぎてエネルギーの回復が追いついていないタイプ。
✅朝から疲れている
✅少し動くだけで疲れる
✅食後に眠くなる
などの特徴があります。
責任感が強く、無理をしやすい人によくみられます。
身体を養う栄養が不足、過剰に消耗しているタイプ。
✅立ちくらみ、めまいが出やすい
✅頭がぼーっとすることがある
✅眠りが浅い、夢が多い
などの特徴があります。
デスクワークが多い、睡眠の質が落ちている人によくみられます。
身体を潤す力が足りず、興奮状態が抑えられないタイプ。
✅寝ても疲れが取れない
✅ほてりや寝汗をかきやすい
✅イライラや不安感が出やすい
などの特徴があります。
更年期の人や長期的なストレスを抱えている人によくみられます。
体力はあるのにうまく使えていないタイプ。
✅疲れに波がある
✅ストレスがあると疲れが悪化する
✅ため息が出やすい
などの特徴があります。
ストレスが多い人、気遣いをしやすい人によくみられます。
余剰な水分が身体に溜まっているタイプ。
✅身体が重だるい
✅足がむくみやすい
✅冷えを感じやすい
などの特徴があります。
脾(胃腸)や腎などの機能低下で水分代謝の乱れがある人、水分を過剰に摂取している人によくみられます。
疲労のタイプ別によく使うツボをご紹介します。
足三里など。
→減ってしまった気を補う。
三陰交など。
→血を補う。
太渓など。
→身体の潤いを補う。
内関など。
→気のめぐりを改善させる。
陰陵泉など。
→余分な水分を取り除く。
※使うツボはあくまで一例であり患者さんそれぞれの状態によって変えていきます。
不規則な食事や偏食は気や血を不足させます。
食事時間や内容に気をつけましょう。
アルコールや辛いものの偏食は気や血を損傷します。
また身体に熱がこもり相対的に潤す力が減少し陰虚タイプにもなりやすくなります。
お酒と辛いものはほどほどに。
目を酷使すると血を消耗し血虚タイプになりやすくなります。
さらに睡眠時間が短くなると陰虚タイプになることも。
眠る前はスマホを見ず目を休めましょう。
休んでも回復しない疲れは気滞タイプや痰湿タイプで滞りが起こっている可能性があります。
軽く運動することで滞りが解消され疲れが取れやすくなります。
参考:教科書検討小委員会著『新版 東洋医学臨床論』南江堂、2022年
川喜田健司、矢野忠著『鍼灸臨床最新科学』医歯薬出版株式会社、2014年
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