大田区大森・山王の鍼灸院、りゅうしん堂では
月経前症候群(PMS)をどうみるのか
東洋医学と西洋医学の視点を織り交ぜながら
ご紹介します。

月経前症候群(PMS)

月経前症候群(PMS)とは?



月経前症候群(PMS)とは月経前3〜10日間(黄体後期)に現れる心や身体の様々な不調のことで月経とともに減退または消失するものをいいます。

月経前症候群(PMS)の女性

よくみられる症状

・イライラする
・気分の落ち込み
・睡眠障害
・頭痛
・腰痛
・乳房の張りや痛み
・むくむ
・食欲増進or食欲低下

PMSのはっきりした原因は分かっていませんが、女性ホルモンの変動が影響しているといわれています。
ただし、必ずしも女性ホルモンが異常に多くまたは少なく分泌されるわけでなく、正常な分泌であってもホルモンの変化に対して身体や脳が敏感に反応してしまうことでも起こるといわれています。

黄体後期に血液中の女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が低下することで、脳でホルモンや神経伝達物質(セロトニンなど)のバランスが乱れ、心や身体の様々な不調が現れます。
また、月経前は緊張状態をつくる交感神経が優位になりやすく、リラックスする副交感神経とのバランスが崩れることも不調の原因と考えられています。
このように、脳内のホルモンや神経伝達物質は女性ホルモン以外にも、ストレスなど様々な要因の影響を受けており、PMSはいくつもの要因が重なり合って発症します。

PMSに対する鍼灸施術のエビデンス

医療研究で信頼性の高いレビューの一つであるコクランシステマティックレビューでは、5件のランダム化比較試験(277名)が統合され、シャム鍼(偽鍼)との比較で鍼施術は、気分関連PMS症状および身体的PMS症状を改善する可能性が示されました。
しかし、研究数が少なく対象者数も少ないため、エビデンスの質は低い~非常に低いと評価されています。

この結果をもってPMSに鍼灸は効かないと決まったわけでわありません。
一方で鍼灸がPMSに確実に効くことが科学的に証明されているとも言えません。
この中間にあるのが現在の鍼灸研究の位置づけです。

PMSに対する鍼灸施術のメカニズム

鍼灸施術では直接、女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)の量を変化させることは現在できないと思われています。
代わりにPMSに対する鍼灸施術のメカニズムには次の作用が考えられています。

①神経内分泌の調節

鍼施術を行うことで、視床下部ー下垂体ー卵巣軸に作用し、黄体期の女性ホルモンの変動に対する感受性を低下させることでPMS症状を抑えると考えられています。

②自律神経の調節

PMSによる疲れやすさ、イライラする、眠りが浅くなるなどは自律神経の働きが関係している可能性があります。
鍼灸施術を行うことで自律神経の機能に影響を与える可能性が研究されており、PMSの症状についても影響があると考えられています。

③神経伝達物質への作用

PMSによるイライラや不安、気分の落ち込みなど気分改善は神経伝達物質であるセロトニンが関係するといわれています。
実際、セロトニン系に作用するSSRIという薬がPMSの治療に使われていることもあります。
鍼施術はセロトニン放出を促進する可能性が動物実験で示されており、SSRIと類似した作用経路を介して気分改善に寄与すると考えられています。

④鎮痛作用

PMSでは頭痛や肩こり、腰痛など痛み症状を伴うことがあります。
鍼灸施術では末梢神経への刺激を通じて脊髄や脳の疼痛調節システムに影響し、痛みを抑制する作用が研究されています。
PMSに直接作用するのではなく、PMSに伴う痛み症状を軽減できるという考えもあります。

PMSの2タイプ

東洋医学ではPMSが起こるものには以下のようなタイプが考えられます。

①肝鬱気滞(かんうつきたい)タイプ

肝の疏泄機能がうまく働かず、気が滞ることでPMSが起こるタイプ。

✅胸が張る

✅食欲不振になりやすい

✅下痢が多い

✅抑うつまたはイライラしやすい

などの特徴があります。

ストレスや疲労が溜まっている人に起こりやすくなります。

②痰熱(たんねつ)タイプ

滞った気が熱化し津液(身体の水分)に影響する、または痰湿(余分な水分)が溜まることで熱化しPMSが起こるタイプ。

✅不眠になりやすい

✅頭痛が多い

✅不安またはイライラしやすい

などの特徴があります。

ストレスのほか、脂っこいものや辛い物の食べ過ぎなどで起こりやすくなります。

PMSのツボ

PMS全般に使うツボ(基本のツボ)とタイプ別のツボをご紹介します。

○基本のツボ

三陰交など。
→月経は血の状態によって左右されるため、肝・脾・腎に影響し血に関わる三陰交が基本のツボになります。

PMSのツボ

○タイプ別のツボ

上記のツボにそれぞれのタイプに関連するツボを合わせていきます。

①肝鬱気滞タイプ

太衝、内関 など。

→肝の疏泄機能を高める。

②痰熱タイプ

豊隆、曲池 など。
→身体の痰湿と熱を取り除く。


※使うツボはあくまで一例であり患者さんそれぞれの状態によって変えていきます。

PMSのセルフケア

PMSのセルフケアを3つご紹介します。

①ストレスを溜めない

肝鬱気滞タイプはストレスなど過度な精神刺激で悪化します。

適度な休憩、十分な睡眠をとる、または運動や趣味などでリフレッシュすることが大切です。

②食生活に気をつける

食事量が少なすぎると気血が不足してしまい気の流れが滞り安くなります。

また、脂っこいこのや辛い物などの偏食があると痰熱タイプになりやすくなります。

量やバランスに気をつけましょう。

③頑張りすぎない

仕事が忙しいなどで心身ともに疲れてしまっていることでも気が減少し流れが悪くなることがあります。

いつもよりもPMSが強い場合は頑張りすぎているのかもしれません。
自分を労ってあげましょう。

参考:教科書検討小委員会著『新版 東洋医学臨床論』南江堂、2022年
川喜田健司、矢野忠著『鍼灸臨床最新科学』医歯薬出版株式会社、2014年

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