大田区大森・山王の鍼灸院、りゅうしん堂では
つわりをどうみるのか
東洋医学と西洋医学の視点を織り交ぜながら
ご紹介します。
つわりとは、妊娠によって起こる悪心(吐き気)・嘔吐などの消化器症状を中心とする症状のことをいいます。
悪心・嘔吐のほかに、嗜好の変化や食欲不振、胸やけや全身のだるさなどがよくみられます。
全妊婦の80〜90%にみられるといわれ、経産婦より初産婦に多くなります。
妊娠5〜6週頃から出現し、その多くは一過性で12〜16週頃までに自然になくなるとが多いです。
原因は明確になっていませんが、ホルモン説、中毒説、自律神経説、アレルギー説などがあり、内分泌や代謝の急激な変化と自律神経失調症などによる適応不全症候群と考えられています。
つわりに対する鍼灸施術の臨床研究はきわめて少なく、指圧やリストバンドなどを含めた研究結果が参考になります。
指圧やリストバンド、鍼などによる悪心に関する9論文では以下のような結果がみられました。
1)指圧(1論文)では対照群との間で有意差が認められました。
2)リストバンド(5論文)では対照群との間で有意差が認められました。
3)鍼(1論文)では対照群との間で有意差が認められませんでした。
4)電気刺激(2論文)では対照群との間で有意差が認められました。
指圧やリストバンド、鍼などによる嘔吐に関する13論文では以下のような結果がみられました。
1)指圧(3論文)では対照群との間で有意差が認められました。
2)リストバンド(6論文)では対照群との間で有意差が認められました。
3)鍼(2論文)では対照群との間で有意差が認められませんでした。
4)電気刺激(2論文)では対照群との間で有意差が認められました。
内関へのツボ刺激により、乗り物酔いや化学療法による悪心・嘔吐が改善されることから、つわりによる悪心・嘔吐も同様の経路で改善されると想定されています。
内関へのツボ刺激は、嘔吐中枢に作用し、迷走神経を介して胃の異常運動を整えることで悪心・嘔吐が軽減されると考えられています。
効果機序については仮説の段階であり、今後の研究が待たれます。
東洋医学では妊娠すると赤ちゃんを守るため、気(エネルギー)や血(栄養)の使い方が変わると考えられています。
その影響を特に受けやすいのが
・脾胃(消化吸収)
・肝(自律神経、気の調節)
になります。
この変化の途中で気血のバランスが乱れ、脾胃や肝の機能失調が起こるとつわり症状が出現します。
東洋医学でよくみられるつわりには次の3タイプがあります。
胃腸の消化吸収の力が追いつかず、つわりが起こるタイプ。
✅妊娠6〜12週以降にみられやすい
✅食欲がない
✅食べ物の匂いを嫌う
✅食べるとすぐに吐く
などの特徴があります。
もともと胃腸が弱い人に多くみられます。
胎児を養うため母体の血が不足、その影響でストレス耐性が下がりつわりが起こるタイプ。
胃で消化したものを下へ流す力が弱まり、気が上にのぼってしまう状態です。
✅妊娠初期にみられやすい
✅ムカムカする、口が苦い
✅ゲップが増える
✅抑うつやイライラしやすい
などの特徴があります。
もともと貧血や立ちくらみがある人に多くみられます。
脾の機能失調で痰湿(余分な水分)が生じ、その痰湿が胃腸の働きを阻害しつわりが起こるタイプ。
痰湿が胃腸に溜まり消化の流れを邪魔している状態です。
✅妊娠初期にみられやすい
✅口が甘く粘る
✅胸焼け、食欲が落ちる
✅むくみやすい
などの特徴があります。
脂っこいものや甘いもの、味の濃いものを好む人に多くみられます。
つわり全般に使うツボ(基本のツボ)とタイプ別に使うツボがあります。
内関など。
→吐き気を抑える特効穴、嘔吐中枢の活動を抑制すると言われています。
上記のツボにそれぞれのタイプに関連するツボを合わせていきます。
足三里など。
→胃腸の力を強める。
太衝など。
→ストレス耐性を高める。
陰陵泉など。
→余分な水分を取り除く。
※使うツボはあくまで一例であり患者さんそれぞれの状態によって変えていきます。
つわりのセルフケアを3つご紹介します。
空腹時に吐き気が出やすいと言われています。
空腹時間を短くするためにこまめに取りましょう。
一度に食べ過ぎるのは注意しましょう。
過度な興奮やストレスは肝胃不和タイプのつわりを悪化させる原因になります。
できるだけリラックスして過ごしましょう。
脂っこいものや甘いもの、味の濃いものの偏食は痰湿タイプのつわりを悪化させると言われています。
痰湿タイプのつわりの場合はさっぱりとした食事を心がけましょう。
「妊娠だから仕方ない」
「みんなが通る道」
そう、思って我慢していませんか?
東洋医学では身体のバランスを整えることで楽になることがあります。
つわりは赤ちゃんを守るための変化の結果ではありますが、つらさを我慢する必要はありません。
まずはお気軽にご相談ください。
⚠️1日に5回以上の嘔吐による脱水症状、体重減少を認める場合はつわりが悪化した妊娠悪阻の可能性があります。
その場合は輸液などの治療が必要になるため、早めの専門医への受診がおすすめです。
参考:教科書検討小委員会著『新版 東洋医学臨床論』南江堂、2022年
川喜田健司、矢野忠著『鍼灸臨床最新科学』医歯薬出版株式会社、2014年
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